WIPOへの直接出願 その1

日本の出願人は、日本の特許庁(JPO)か、国際事務局(WIPO)かを受理官庁としてPCT出願を行うことができ、それ以外の受理官庁においてPCT出願を行うことはできません。通常、日本の出願人はJPOにPCT出願を行っており、WIPOを受理官庁にしてPCT出願を行うことはないと思います。

WIPOを受理官庁にしてPCT出願をする場合としては、①優先権の期限までにPCT出願ができず時差の関係でWIPOに出願する場合、②他国の特許事務所を通じて手続を進めたい場合、③優先権の回復について「緩やかな基準」の適用を受けたい場合等が挙げられます。

①~③のうちで、①はもっともレアケースだと思われますが、これはJPOよりもWIPOのあるスイスの方が時差が遅れていることを利用します。日本時間で期限を過ぎてしまっても、その翌日の早朝の時間であれば、スイス時間では期限が過ぎていないため、WIPOに対しては期限内に手続を行うことができるという場合です。塩川の知り合いの先生は、この手続をしたことがあるそうです・・。

②については、一時期、韓国等の外国事務所が、PCT出願手続及び各国移行手続を外国事務所から行うように、日本企業にセールスしていました。その場合のように、外国事務所を使おうとすると、JPOに対して外国事務所は「代理人」となることができないため、WIPOに直接PCT出願をすることになります。もっとも、WIPOに出願をすることになったとしても、外国事務所はPCT出願の願書で「代理人」欄にはチェックを入れることはできず(PCT規則83.1の2)、「通知のためのあて名」欄にチェックを入れることになります。

ただ、このような手続の進め方は、近年はあまり聞かないように思います。その理由としては、手続及び管理が煩雑になること、並びに外国事務所を使ってもそれほど安いわけではないこと等が挙げられると思います。このような手続を行う外国事務所の友人に料金を聞いてみたところ、少なくとも近年の日本の事務所の料金と比較して、非常に安いという印象はありませんでした。

なお、私もグローバル企業の日本法人の出願を担当していた関係で、外国法人のPCT出願をWIPOに提出した経験が何件かありますが、何かと手続が煩雑であり、苦労した覚えがあります(事務担当者はとても大変そうでした・・)。 手続を容易にするためには、日本法人の名義でPCT出願をJPOに行った後に、本国の法人に名義変更を行うこともできます。このようにすれば、出願直後に名義変更をしたとしても、国際調査機関等はJPOとなるため手続は容易です。しかし、税法上の問題、特許を受ける権利に関する内部手続の問題等が発生する可能性があり、また受理官庁の管轄を定めたPCT規則の潜脱に他ならないため、これはこれで問題があるかもしれません。

③については、後日書きます。