日本弁理士会が提出したEPOの品質に関する意見・要望について

 EPOからの依頼に基づいて、日本弁理士会は、EPOの品質に関する意見・要望を昨年10月に提出していました。それに対するEPOからの回答が、1月8日に弁理士会の電子フォーラムで公開されました。

 一般には公開されていないため簡単にのみ記載しますが、日本弁理士会から提出した意見・要望は以下のとおりです:

 (1)日本の拡大先願(特許法29条の2)の規定では、同一出願人又は同一発明者には適用がないことになっているのに対して、EPOにおける同様の規定(新規性違反:EPC54条(3))では適用がある(いわゆる、自己衝突の問題がある)。これに関して、自己衝突における発明同一性の判断の事例集等の提供を検討していただきたい。

 (2)EPOの非常に厳格な補正要件を、より柔軟に判断して欲しい。

 (3)EPOの非常に厳格な発明の単一性要件を、より柔軟に判断して欲しい。

 (4)EPO からの通知に記載される情報が不十分であると感じるため、ユーザーフレンドリーの観点から通知に記載される情報をもっと充実化して欲しい。

 (5)コンピュータ関連発明について、「非技術的な特徴は進歩性の存在をサポートできない」という基準の適用を緩和し、可能な限り、クレームされた特徴を技術的特徴として進歩性の判断をするようにして欲しい。

 これらの点については、我々日本の弁理士にとっては明細書作成時等にいつも悩ましく面倒くさいと感じる点であるため、とても関心が高い点であると思います(個人的には、新規性喪失の例外の規定が厳しすぎる、という点も挙げたい)。

 これに対して、EPOからの回答はとても残念なものでした。ただ単にこれらの5点が、EPOが依頼をした「EPOの『品質』に関する意見・要望」となってなかっただけかもしれませんが、(4)を除いてEPOからの回答は「EPOの規定である」というようなもので、(4)についても、分からない点があれば電話でも聞けますよ、という程度でした。

 もちろん、EPOが制度変更を検討する際に、日本弁理士会から意見・要望があったな~と見直してくれることもあるのかもしれませんが、EPOは、他国に比べて非常に厳しい各種の規定についての影響を再検討した方が良いのではないかと思います。

 クレームを起案する人間は、起案する際に、まず自国の特許庁の特許要件をクリアできるかどうかを検討します。もちろん他国の制度も頭に入れながら検討もしますが、少なくとも基礎出願のクレーム起案において、最重要なのは自国の制度になります。

 したがって、欧州の出願人は、EPOの非常に厳しい基準に合わせてクレームを起案することになります。その結果、例えば上記(5)の基準がEPOで厳しいままの場合、欧州の出願人は日本や米国において広く特許にできる可能性があるにも関わらず、狭いクレームを起案することになるか、最悪の場合、出願そのものを諦めてしまいます。そもそも特許出願を行うという発想にすらならないかも知れません。

 上記(3)の単一性違反の厳格性についても同様であり、日本等では1件の出願で特許にできる場合でも、欧州の出願人は、わざわざ2件のPCT出願を同日に行って2倍のコストを掛けている場合があります。もちろん、起案者が他国の制度までしっかりと頭に入っていれば、そのような悲劇は起きないわけですが、そのような起案者はあまり多くないように思います。

 上記(1)~(3)については、後日記載しますが、他国に比べて基準を厳しくすると、国益を損なう場合があるように思います。

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